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日本を代表するショーロ・フルーティスト熊本尚美さんとアカリ・レコードの仲間たちによる作品。熊本尚美(フルート) マウリシオ・カヒーリョ(ギター) ペドロ・アモリン(バンドリン) ルシアーナ・ハベーロ(カヴァキーニョ) セウシーニョ・シウヴァ(バンデイロ)プロデュース:マウリシオ・カヒーリョ&ルシアーナ・ハベーロ2005年2月 Estudio da Acari Records(リオデジャネイロ)にて録音。1.-3.ザ・フェニックス・ホール組曲サンバワルツマシーシ4.アーリョ・ノ・ショーロ5.ビッショ・ベーコン6.ソー・プラ・ムリェール7.マランドン8.2×0(ドイス・ア・ゼロ)9.ソリダォン10.ショッチ・タンゴ11.ヴィジータ・ヂ・ドミンゴ12.サクラ13.デンゴーゾ このバンドのリーダー格マウリシオ・カヒーリョは、カメラータ・カリオカのメンバーとして来日した1985年以来、日本にショーロの種をまき続け、日本人ミュージシャンの良き指南役・相談役をつとめ、2000年に出会った熊本尚美の人生を一変させた。他のブラジル勢3人もさまざまな形で日本のショーロ人口の増加に貢献してきた。この、種の発芽と開花にシンクロして実現した昨年の来日を機に結成されたバンドの初CDは、公演のために書き下ろした曲、来日中に作った曲、日本の友人たちに捧げた曲など、彼らと日本との固い絆から生まれたものだが、先入観や情緒に流されず聴くと新鮮な発見がある。たとえば、ショーロの演奏に欠かせない生真面目なアカデミズムと、ホーダ・ヂ・ショーロが象徴する自由でお茶目な即興精神とのバランスが絶妙なのだ。具体的には後者の要素(自由でお茶目)が、ACARIレーベルの他の作品よりもずっと明快に出ているので、高度で深遠な音楽をやりながらも極上の楽しさにあふれていた昨年の来日ステージの様子がよみがえってくる。もうひとつは、リオに移った熊本尚美も含め、生粋のカリオカ気質が全編を貫いていること。北東部の音楽などの影響もあるとは言え、ショーロが「ブラジル音楽」である以前に「カリオカの音楽」であることを、このCDでの彼らは誇らしげに伝えている。では、カリオカ気質とは? 彼らのライヴを聴けば体で感じられます。(中原 仁)マウリシオを中心としたアカリ派の特徴として、安易な目新しさよりもショーロの伝統を重視する傾向があげられるが、真っ向から古典に取り組んだ労大作「プリンシピオス・ド・ショーロ」以降ますます新古典派的色合いを強めてきており、本作もその延長線上にあるといえる。収録曲の大半が、伝統の再解釈により新たな展開を試みたオリジナル曲で、密度の高いアンサンブルから抑制のきいた叙情を引き出している。アルバムの前半はまとめて配されたマウリシオの曲。近年の古典発掘の影響からか表現に明晰さが加わったことで、どれも非常に聞きやすくダイナミックに仕上がっている。昨年来日した際の「空想の生物ベーコン」なるユーモラスなエピソードから生まれた5.では、旋律冒頭に繰り返し現れる飄逸なモチーフが全体を引き締め強い印象を残す。W杯ブラジルチームの五回目の優勝に捧げられた尚美さんの曲はフルートの魅力がよく表れた佳作で、ピシンギーニャ曲をもじった命名が微笑ましい。ペドロの充実した2作品のうち、特に予想外の着地点を持つ旋律が物憂げな9.は、彼の作曲家としての力量が遺憾なく発揮された出色の出来。トリッキーな仕掛けを持つ11.はパンデイロ奏者の作品らしい明快な切り口で、次に続くルシアーナの美しいヴァウサと好対照をなしている。最後は、往年の名カヴァキーニョ奏者ジョナスの曲で先輩に敬意を表しつつ、絡み合う4本の旋律が渾然一体となり、収束する瞬間突然曲が終わる。(稲葉光)